第30章 宮本景太に口説かれた

橘礼子の目には、橘晴美こそが「いちばん出来のいい娘」なのだろう。

そして自分は――よそ者。

本当は自分こそ橘家のお嬢様で、橘晴美のほうが居場所を盗んだ側のはずなのに。

けれど、皆が愛するのは橘晴美だった。

まるで自分が物語の中の悪役令嬢みたいじゃないか。

自分の部屋を取り戻そうとすれば「奪うな」と言われる。

自分のために家庭教師を探せば「晴美のものを横取りした」と責められる。

橘結衣はそんな扱いに、もう慣れていた。鼻で笑って言い捨てる。

「じゃあ、母娘仲良くお幸せに」

そう言うなり、橘礼子を一瞥もせず、さっさと立ち上がって階段を上っていった。

少女の嘲りは、見えない平手打...

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